梨の実通信 |
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そっと目を閉じて祈れば朝焼けの海がまぶたの裏にひろがる 「世」を使う熟語を綴りゆくノート「世界」で始まり「渡世」で終わる しっかりと手をつなぎ合いおなじ夢見るならふたり海女になる夢 ひとくちだけ齧ったたがいのドーナツをくっつけ∞(無限大)をつくった 逆光で撮った写真のわたしたち二羽のつばめのように似ている 少年を演じる友が劇中に「僕」というたびすこしせつない 化粧品売り場の隅でマニキュアをたがいの小指にこっそり塗った 4に似たヨットと3に似たカモメ友のノートに夏はきている 渋谷駅のコインロッカーいっせいに開いて秘密を喋り始める 玄関のチャイムは鳴らさなくていい窓の下から小石を投げて ふたり手を重ね合わせて球根が芽吹くのを待つしずかさのなか やけに広い音楽室の空席のひとつひとつに光がたまる 「そんなこという資格ない」と言い捨てて影法師つれ駆け出してゆく キャラメルがゆるんで甘くなるまでを舌に転がす四角い痛み 休みの日だけ嵌めているおそろいの指輪の跡が痒い月曜 てかてかと唇つやめくグラビアのアイドル歌手が風にめくれる 髭のないハートのキングに落書きを私たちにはナイフの傷を 鳥の影よぎっても開け放てないわたしの中の嵌め殺しの窓 眼薬とリップクリーム交換し鏡の中に並んで映る わたしたち織られる前の糸だからこんなに縺れ結ぼれあって 連作個人誌「梨の実メール」第7号(2003年5月10日発行)に収録。 このとき開催中だった「題詠マラソン2003」の参加作品とは別に、同じ100題を利用して20首ずつの連作を詠み、「梨の実メール」に発表した。これはそのうち「061-080」の題を詠み込んだもの。「061-080」の題は以下の通り。 061:祈る 062:渡世 063:海女 064:ド-ナツ 065:光 066:僕 067:化粧 068:似る 069:コイン 070:玄関 071:待つ 072:席 073:資 074:キャラメル 075:痒い 076:てかてか 077:落書き 078:殺 079:眼薬 080:織る
by noma-iga
| 2006-09-23 16:51
| 短歌作品
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