梨の実通信


五十嵐きよみの短歌ブログ。 ぼちぼちいってみたいと思います
by noma-iga
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ

キョーコのいない八月


さえざえと一行の詩は青 どこか遠くの海で氷河崩れる

チェンバロの音を聴きながら透けてゆく耳すこしずつ風に近づく

髪と髪からませ少女ふたりいるマングローブが見ている夢に

サバンナのキリンのようにいち早く風うけとめるキョーコのうなじ

青空をのみこんだ午後サイダーにむせて笑えば光がまぶしい

制服のボータイ投げ捨て夏がくる白ブラウスでもう風になる

キョーコにはキョーコの掟ある夏に「かもめ」を選ぶジュークボックス

風立てば水に映ったわたしたち歪んでどんなことでもできそう

サドルから腰を浮かして走るとき常よりまぶしい日に焼けた脚

アリババを救う女の知恵あれば妻より別のものになりたい

プールから塩素のにおいを連れてきてテラスの椅子に彼女が憩う

オキシドールに脱色された金色の産毛の素足 夏の植物

日暮れには沓脱ぎの石冷えているキョーコをまねて裸足で立っても

お勝手に母が灯ともしこの家に私はただの長女に戻る

少女の名ノートに並べてみるゆうべフランシーヌにはなれないキョーコ

<蝿の目で見た風景>をもう一度見たくて探す理科の教科書

パイナップルの「ル」で終わるまで歩道橋を昇っては降りる私がいたこと

からっぽの私が干されているような物干し竿のブラウス憎む

対になる言葉を探す カイの目に氷のかけら、私にキョーコ

異なった時空の夏に足の爪キョーコが赤く染めている頃

水面に交尾の影を映しつつ飛べる羽根いま背(せな)に持ちたし

汗にまみれ誰かとからだを合わせいる夢にいつしかキョーコとなって

ネガフィルムに反転された古い古い記憶のようなキョーコの笑顔





初出は連作個人誌「梨の実メール」創刊準備号(2002年9月15日発行)。第二歌集『港のヨーコを探していない』に収録した連作「キョーコ」の姉妹作。
[PR]
by noma-iga | 2006-09-20 00:01 | 短歌作品
<< 書物は踊る メコンの泥水 >>


ライフログ
最新のトラックバック
083拝(帯一 鐘信)
from ダイコン短歌野郎 ~とりあえ..
ドミンゴ
from 自動車-情報局
題詠マラソン2005(7..
from 気まぐれ徒然かすみ草
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧