梨の実通信


五十嵐きよみの短歌ブログ。 ぼちぼちいってみたいと思います
by noma-iga
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アンケート結果に見る「ネット短歌」の実状

昨年、インターネット上の日記で、大辻隆弘さんが子どものころの思い出話として、電話のことを書いておられた。大辻さんが小学生のころ、電話のある家はまだ少なく、何か緊急の用があるときは、近所で一軒だけ電話のある家のお世話になった、というような内容だった。似たような経験をもつ同世代の者として(大辻さんは昭和35年、私は昭和34年生まれ)、懐かしい気持ちでその一文を読んだ。

それが、今やインターネットや携帯電話の時代である。家に電話がなかった子どものころから、まだ一世代あまりしか経っていないのに、このところの通信技術の進歩には本当に驚かされる。




私がインターネットを利用するようになったのは7年前で、短歌を始めたのもそれとほぼ同時期のことになる。ネットを通して結社に加入したり、結社の活動とは別にネット歌会を主催したり、現在は「題詠マラソン」というイベントを開催したりと、ネットの利用頻度はかなり高い。

ネットを活発に利用するようになったのは、とにかく便利だったからである。たとえばネット歌会は、時間をさいて出かけなくても、自宅にいながら空き時間を利用して参加できる。短歌を始めて間もない身にとっては、ネット歌会を通じて知り合いができるのもうれしかった。

また、今年で3年目を迎える題詠マラソンも、インターネットの利便性があってこそ実現できたイベントといえる。題詠マラソンは、たまに開かれることがあるという百首詠の合宿にヒントを得たもので、あらかじめ決めておいた百の題を詠み込んだ歌を、ネット上の掲示板に参加者が投稿していくという仕組みだ。今年の参加者は563名にのぼり、もしも実際にこれだけの人数が集まるイベントを運営するとしたら並大抵のことではないが、ネットならば比較的簡単に実施できる。基本的には投稿用の掲示板が1つあればOKで、運営費用は1円もかかっていない。

そんなわけで、私にとってインターネットはきわめて便利な通信手段であり、電話すら珍しかった世代の感覚としては、たとえば1冊の連絡帳を誰でも自由に利用できるというものに近い。ところが、ちょうど私がインターネットを活発に利用するようになったころから、ネット上の短歌が「ネット短歌」と呼ばれ、何か特別なもののように取り沙汰されるようになり始めた。

たとえば、インターネット上に従来の短歌とは異なる「ネット短歌」という特殊な作風があるかのように語られたり、ネットを通して短歌に親しむ者は、短歌の伝統とは無縁のところにおり、既成の歌壇と対立する立場であるかのように扱われたりといった具合だ。すべてがすべてというわけではないが、しばしばこうした指摘に出会い、面食らうことが少なくない。

ネットを利用するというだけで、どうしてそこまで特殊な存在のように思えるのだろう。昔懐かしい話になぞらえれば、「エレキギターは不良」というのと同じくらいよくわからない。いや、エレキの場合はそれでも、「大人VS.若者」という対立構造が成り立ったが、ネットの利用者は若者だけではないし、結社に所属する者も数多いのだ。

「ネット短歌」とはいったい何なのか。それは従来の短歌と対立するようなものなのか。ネット利用者の大半は、実態のよくわからない「ネット短歌」という呼称に戸惑うか、あるいは、ネットの利用歴よりも歌歴のほうが長いといった理由で、自分とは関係ないと思っているかである。

          *

このことを裏づけるものとして、今年1月、インターネット上で実施した「ネット短歌アンケート」の結果を紹介したい(有効回答100時点での集計結果)。まず、このアンケートの回答者、つまりインターネット上で短歌に関わる100人の基本的な情報を見てみよう。

●回答者の年齢層
「11~20歳=4%」「21~30歳=24%」「31~40歳=40%」「41~50歳=18%」「51~60歳=6%」「61~70歳=2%」「回答なし=6%」
●短歌歴
「1年未満=12%」「1、2年=18%」「3、4年=20%」「5、6年=11%」「7~10年=16%」「11~20年=19%」「21年以上=4%」

この数字からわかるように、インターネットで短歌に関わる者は「若い世代」だけではないし、「初心者集団」というわけでもない。仮に短歌歴「3、4年」までを初心者としてくくるとしたら、それより長いキャリアの者がちょうど半分を占めている。

●結社や同人誌への所属の有無
「所属している=50%」「所属していない=47%」「過去には所属していた=3%」
●結社や同人誌に所属したのは、ネットを始める前か、始めた後か(有効回答53)
「ネットを始める前=57%」「ネットを始めた後=34%」「ほぼ同時=8%」

結社に所属している者と所属していない者は、ほぼ半々という結果になった。比較資料として、「短歌研究新人賞」の応募者の内訳(1999年短歌研究「うたう」掲載)を見ると、結社に所属する者は28%、所属しない者は68%。単純に比較するわけにはいかないかもしれないが、ネット利用者の結社所属率は高いほうだといえる。また、ネットを始めてから結社に所属したという者も少なくなく、「ネットVS.結社や既成の歌壇」といった図式は説得力に乏しい。

 次に、「ネット以外の場で行っている短歌の活動」についてもたずねてみた。13項目の選択肢を用意し、該当するものを複数回答で選んでもらったところ、次のような数字となった。

●ネット以外の場で行っている短歌の活動
「歌集や歌書を読む=87%」「短歌総合誌を購読する=73%」「シンポジウムや批評会に参加する=48%」「結社誌、同人誌に作品を投稿する=47%」「歌会に参加する=43%」「短歌総合誌の新人賞に応募する=23%」「歌集・歌書を出版したことがある=17%」「短歌のコンテストに応募する=15%」「短歌総合誌の投稿欄に投稿する=12%」「教室やカルチャーセンターで短歌講座を受講する=12%」「結社誌、同人誌の編集作業にたずさわる=10%」「新聞歌壇に投稿する=9%」「回答なし=6%」

このうち、「回答なし」を「ネット以外での活動をいっさい行っていない層」ととらえるとしたら、その割合は6%。つまり、94%はネット以外でも短歌に関わっていることになり、実際、大半の回答者が複数の項目を選択していた。

このように、ネット以外でも短歌に関わっている者が多いという現実を踏まえれば、次の2つの結果も頷ける。

●自分の歌を「ネット短歌」だと思うか
「思わない=52%」「わからない=27%」「思う=11%」「その他=10%」
●自分を「ネット歌人」だと思うか

「思わない=59%」「わからない=21%」「思う=11%」「その他=8%」
つまり、回答者の半数以上は自分の歌を「ネット短歌」だと思わず、自分を「ネット歌人」だとも思っていないわけだ。また、「思う」と回答した者の中にも、「ネットを利用しているから、そう見られてもやむをえない」といった消極的な肯定派は少なくなかった。

          *

このように、巷間でいわれる「ネット短歌」とネットの実状の間には、かなりのずれがある。ネットそのものが10年ほど前までは身近でなかっただけに、「新しいもの」「理解しがたいもの」というネットのイメージが、短歌におけるネット利用者やその作品にまで安易に援用されている感が強い。

しかし、ネットに接続したというだけで、急に新しい作風が獲得できるものではないだろう。また、独自の作風をもつ作者がいて、その作品を批評するとき、ネットと関連づけて批評を展開するやり方は、ネット利用者にとっては説得力に乏しい。しかも、活字媒体で「ネット短歌」が語られるときにしばしば引き合いに出される作者は、ネットとの関連がそれほど強いとはいえないケースすらある。たとえば今橋愛、飯田有子などの作者は、先の「ネット短歌アンケート」では、ネット利用者から「ネット歌人」だとはまったく認識されていない。

もうそろそろ「ネット短歌」というくくり方で作品を論じるのはやめにするべきだろう。ネットは通信手段であり、その特性を活かした「場」としての可能性を模索したほうがよほど有意義だと思える。ネットはさまざまな利便性をもつ一方で、利便性に伴う負の面も併せもっている。長所と短所を踏まえたうえで、いかに活用していくかを考え、実践していくべき時期にある。

          *

なお、「ネット短歌アンケート」は現在も左記のサイトで回答できるほか、集計結果を見ることもできる。このようなアンケート調査を手軽に行えるのも、ネットならではのことだ。
http://www.supreme.co.jp/cfm/ask3/preview.cfm?nID=708545698&P=102583318

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「アンケート結果に見る『ネット短歌』の実状」は、「路上」102号(2005年10月発行)に掲載。「小特集/インターネットの可能性」のために、同誌より依頼を受けて書いたもの。
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by noma-iga | 2005-11-12 16:35 | 評論
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